ヘリテージング
軍艦島には水仙がよく似合う 軍艦島
日本には「見立て」という遊びの文化がある。庭の白砂に置いた自然石を大海に浮かぶ島々に見立てたり、海辺の奇岩に獅子(しし)とか亀とか夫婦(めおと)岩などの名前をつけたり…。
石庭(せきてい)枯山水(かれさんすい)は幽玄の美学だが、岩に名前をつける風習は万国共通だ。
長崎市野母崎(のもざき)沖4キロに浮かぶ端島(はしま)、この炭鉱の島は「軍艦島」とも呼ばれている。島全体に屹立(きつりつ)する炭鉱や炭住の施設、大正12年、当時の長崎日日(にちにち)新聞が、その姿を、三菱長崎造船所で進水したばかりの戦艦「土佐」に見立てて、「軍艦島」と紹介した。
明治23年、三菱による本格的な採掘事業が始まる。大正5年には日本初の鉄筋コンクリートの高層集合住宅が造られ、5〜9階建ての構造物が小さな島を覆 (おお)うようになる。島には「会社立」尋常(じんじょう)小学校や演劇場、料理屋なども設けられた。こうして昭和49年の閉山の日まで、何世代にもわたるコミュニティが島に形成された。
いま軍艦島は上陸が禁止された廃墟(はいきょ)の島だ。ヘリテージングをするには、観光クルーズの船に乗るか、島が眺められる海岸まで行くかのいずれかである。
長崎駅南口から30番のバスに乗り、長崎半島を4、50分も南下すると国道499号線
の夫婦岩付近で島が見えてくる。さらに10分、運動公園前というバス停で降りる。バス停前が野母崎町物産センター、その横には「軍艦島資料館」の看板がある。
物産センターのすぐ裏に水仙公園という小高い丘があり、名前通り一面の水仙畑だ。丘を登ると頂上に見晴らし台がある。軍艦島を撮影する絶好のポイントだ。
深作(ふかさく)欣二(きんじ)監督の映画「バトルロワイヤルU」の舞台として、この島影が使われていた。廃墟の持つ荒涼としたイメージを利用したかったのだろう。まさにこのポイントから撮影したのではないかと思われる。軍艦島資料館では過去と現在の島の様子を100点ほどの写真で紹介している。
絵葉書を購入し、なにかもっとお土産(みやげ)らしいものはとたずねると、恐る恐るスノードームを取り出してきた。ガラスの球体に風景と液体を封入し、逆さにすると雪の粉がきらきらと降り注ぐあの置物だ。中国で作らせたのですが注文どおりにいかなくて……と物産センターの方。
なるほど球体の中の水仙はみんな黄色くて丸い。まるでミカン畑だ。逆さに振っても雪は降らない。しかし、ちゃんと軍艦島が青い海に浮かんでいる。ヘリテージングみやげのコレクションにはぜひとも加えたい。
なお、この島で育った坂本道徳氏を理事長とするNPO「軍艦島を世界遺産にする会」が活動中だ。世界遺産の精神は観光
化より保存に軸足を置く。波風にさらされる構造物は風化が早い。放っておけば軍艦島は軍艦の形を失うハメになる。坂本氏らの活動をみんなで応援したいものである。  
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◆遊覧船
長崎港〜軍艦島沖〜長崎港(やまさ海運(株))
所要時間100分
10名以上要予約
大人3,000円、小人1,500円
TEL095-824-0088
長崎港〜軍艦島沖〜野母崎(やまさ海運(株))
所要時間70分
3/1〜10/31の土日(定期便2便)
大人1,980円、小人990円
TEL095-824-0088
野々串港〜軍艦島〜野々串港(えびす丸)
要予約
1人1,500円(5人から受付)
野々串港発着(長崎駅前南口バス停から長崎バス樺島行き、または岬木場行きに乗車し、後馬バス停下車、徒歩5分)
TEL095-894-2039
野母崎〜軍艦島沖〜野母崎((有)共同観光)
所要時間40分
要予約(冬季運休)
大人1人1,800円、小人850円
野母崎発着(長崎駅前南口バス停から長崎バス樺島行き、または岬木場行きに乗車し、後馬バス停下車、徒歩5分)
TEL095-893-2766