ヘリテージング
賢治が愛した牧場風景 小岩井農場
明治21年、東北本線の工事視察のために盛岡を訪れた、時の鉄道局長官・井上勝が、雫石村一帯の荒地を見て、ここに民間農場を造ることを着想する。鉄道敷設のため田畑が犠牲にされている実情を日頃より心苦しく感じていたからだ。
日本鉄道会社副社長・小野義真と三菱社社長・岩崎彌之助に協力を要請し、明治24年、日本初の西洋式近代農場がこの地に創設された。3人の名字を1字づつとり「小・岩・井・農場」とした。
小岩井農場を語る際に、3人の創設者以外に忘れてはならない詩人がいる。それは宮沢賢治だ。『小岩井農場』(宮沢賢治詩集『春と修羅(しゅら)』所収)は、大正11年、宮沢賢治が何度目かの小岩井農場
訪問をした折に創作されたものだ。
田沢湖線(当時は橋場線)の小岩井駅を下りて農場に向う道すがら、目に入るものや心に浮かぶことを、まるで回しっ放しのビデオカメラのように、次々に写しとって行った長編詩だ。 農場に着いてからも心象スケッチのカメラは回り続けているので、小岩井農場ヘリテージングのちょっと風変わりなガイドブックになる。そこには、詩人の目を通した大正期の小岩井農場が描かれている。「賢治ウォーク」などというイベントもある。
シープ&ドッグショーとかバーベキューレストランとか、小岩井農場は「まきば園」のレジャー・イメージが強くなったが、敷地面積は東京ディズニーランドの35倍もあ
り、宮沢賢治と一緒に「小岩井農場ヘリテージング」をする静かな散策場所はいくらでもある。まずは小岩井農場の旧入り口を、詩人はこう描写する。
「もう入り口だ小岩井農場/(いつものとほりだ)/混んだ野ばらやあけびのやぶ/もの売りきのことりお断り申し候/(いつものとほりだ ぢき医院もある)/禁猟区 ふん いつものとほりだ。」しかしどこを探しても、看板も医院も見当たらないのでご注意。
5、6分も行くと、賢治が「本部の気取った建物」と表現した、2階に望楼(ぼうろう)を備えた「農場本部事務所」が現れる(明治36年建築)。
「耕耘(こううん)部へはここから行くのがち
かい/ふゆのあひだだって雪がかたまり/馬橇(ばそり)も通っていつたほどだ」岩手山を望みながら馬橇の通った耕地を抜けると、やがて木造4階建ての「四階(しかい)倉庫」が見えてくる(大正5年建築)。まるで城砦(じょうさい)のように聳える農業倉庫だ。
最新鋭だった上(かみ)丸(まる)牛舎や煉瓦造りの1号2号サイロは、日本最古のいまも建築当時のままの姿で使用されている。賢治が詩にしたあの頃の牧場風景を残すために。 「馬車が行く 馬はぬれて黒い/ひとはくるまに立って行く」
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Information

【案内】

 
◆基本営業時間
9:00〜17:30(入園は16:30まで)
◆休館日
グリーンシーズン(2006/4/22 〜2006/11/5)は休まず営業
◆入園料
大人(中学生以上)500円/子供(5歳〜小学6年生)250円

【お問い合せ】

  小岩井農牧株式会社 観光部
    〒020-0507
岩手県岩手郡雫石町丸谷地36-1
TEL:019-692-4321
◆URL
http://www.koiwai.co.jp/
 

【アクセス】

 
◆電車・バス
JR東北新幹線「盛岡駅」盛岡駅前10番乗場より「小岩井農場まきば園行き」または「網張温泉行き」バス乗車(約35分)
・JR田沢湖線「小岩井駅」より約6km
◆車
東北自動車道盛岡インターチェンジより国道46号を秋田方面へ約12km(車で約15分)