ヘリテージング
「福沢桃介(ふくざわももすけ)ヘリテージング」を楽しんでみてはどうだろう。ヘリテージングには「人物」というカテゴリーもある。
たとえば、旧帝国ホテルの設計で有名なライトが造った建築芸術を周遊する「フランク・ロイド・ライト・ウォーキング・ツアー」などというものがシカゴにはある。あるいは東京駅を設計した辰野金(たつのきん)吾(ご)の作品を見て回る「辰野金吾ヘリテージング」。
ところで福沢桃介は建築家ではない。20年前、NHKの大河ドラマ『春の波涛(はとう)』で風間杜夫が演じていたのが福沢桃介だ。といっても記憶にないかもしれないが。
桃介はあの福沢諭吉の婿養子。慶応義塾の貧乏学生だった岩崎桃介が諭吉夫人の目にとまり、諭吉の次女と結婚し福沢桃介と姓を変える。株で財をなした桃介は木曽川水系に7つの発電所を建設し大正の電力王と呼ばれる……。これだけならよくある立志伝なわけで、感心はしても感動はしない。何が福沢桃介ヘリテージングの面白みなのか、それは川上貞奴という明治時代に一世を風靡した大女優の存在があるからだ。
桃介18歳、貞奴15歳、運命的な出会いがある。有為転変(ういてんぺん)、夫であり俳優の川上音二郎と死別した貞奴が、電力王となった桃介と同棲を始めるのは彼女が47歳、桃介50歳のときである。
簡略過ぎる紹介なので詳しくは『春の波涛』でといいたいところだが、近所のレンタルビデオ屋さんにはないかもしれない。ちなみに川上貞奴は松坂慶子が演じた。
時の大女優が山深い木曽谷を訪れ、読書発電所の建設現場でサイドカーを走らせたという逸話が残されている。
馬籠(まごめ)から妻籠宿(つまごじゅく)方向へ旧中山道が国道19号線に合流する辺り、木曽川の対岸に読書発電所が姿を見せる。大正12年の竣工。コンクリート造りの煉瓦壁はいま見ても驚くほどモダンだ。そして発電所を眺めたらぜひとも渡ってほしい橋がある。建設資材を運ぶために造られた桃介橋。発電所から2キロほど木曽福島町寄りの上流に架けられた
木製の吊り橋だ。渡り初めの日にはこの上を桃介と貞奴が並んで歩いたという。平成5年、地元の熱心な運動で復元され歩行者専用として復活した。読書発電所と桃介橋、さらに上流の柿其(かきぞれ)水路橋は国の重要文化財に指定されている。
桃介橋近くには福沢桃介記念館が建つ。ここはもともと桃介の別荘であった建物。桃介と貞奴が密(ひそ)かな大人の時間を過ごした場所なのだ。大正ロマンならぬ大正の大ロマンスにあやかりたい人は訪れてみてはどうだろう。12月から3月中旬までは冬季休館になる。
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