ヘリテージングの定義

従来、わが国の歴史観光といえば、江戸時代以前に建造された神社仏閣、城、庭園、武家屋敷などの見物を指し、京都、奈良、金沢、鎌倉、日光、平泉などが日本の代表的な歴史観光都市とされています。

翻って、江戸期以後に目を向けると、ここにも貴重な歴史遺産が無数に存在します。明治維新から大正、昭和戦前にいたる約70年間、「近代」と区分されるこの期間は、わが国が近代国家を築き目覚ましい社会変革を遂げた特筆すべき時でもあります。

この時代に造られた建築物や土木建造物は、特定の都市にかたよることなく、ほぼ全国の市町村に存在しており、その姿形は多種多様です。

学校、庁舎、教会、商店、銀行、倉庫、鉱山、ダム、橋、工場、鉄道、灯台等々、私たち現代人にとってきわめて身近な生活や産業に係る遺産ばかりです。(かつての軍事施設も貴重な近代遺産の一部です)

こうした近代遺産は、これまで近代建築史や近代土木史、郷土史、産業考古学など、もっぱら学術研究の対象であり、一般市民が観光として親しむという概念も名称もありませんでした。

近年「ヘリテージツーリズム」や「産業観光」のような名称も一般的になりましたが、いずれも産業遺産(現代の現役施設も含む)を活用した、いわば産業に特化した観光の総称として使われています。

そこで、これら産業遺産も含むすべての「近代遺産(ヘリテージ)」を楽しむという意味合いから、「ヘリテージング」と名づけられた観光レジャー行動を、現代人のための新しい歴史観光として、幅広く普及させたいと考えました。

社会的関心の高まりは、消えゆく近代遺産の保存・継承を後押しする力となり、ヘリテージングという新たな観光ムーブメントによる交流人口の創出は、まちづくりなど地域の経済振興にも役立つことでしょう。