函館ヘリテージング

ヴィンテージの路面電車が走る町

  函館は路面電車の走る町だ。かつて日本中どこへ行っても、当たり前のように走り回っていたチンチン電車。昭和初期には全国66の町を走っていたという。いまは全国でわずか19都市。
都電荒川線は、東京の北の端12.2キロを走っている。これをもって東京を、函館のような路面電車の走る町とはいい難い。函館市電は函館ドック前から湯の川温泉まで10.9キロ。ほぼ市内を貫く幹線ルートを走っている。見るべきスポットはだいたい沿線にあるので、函館ヘリテージングには「1日乗り放題」 600円の乗車券を買うと便利だ。
土地の人には見飽(あ)きた電車でも、ヘリテージングをする者にとっては、大正2年、鉄道馬車から切り替わった歴史ある乗り物。しかも運がよければ、当時の姿をした本物のヴィンテージ電車「箱館(はこだて)ハイカラ號(ごう)」に乗り合わすことができる。「鉄道ヘリテージング」の中でも、特に路面電車ファンには堪(こた)えられない町だろう。(ハイカラ號は冬季運休)
函館は幕末の開港五港のひとつだが、横浜・神戸・長崎と違い、居留地は外国人だけでなく日本人も住める雑居制をとった。従って、異人館だけが集まるエキゾチックな区域はできなかった。
その代わりともいないが、独特の和洋折衷(せっちゅう)住宅が町のあちこちに建てられている。これは、他の都市では見られない一風変わったスタイルの町屋だ。
百聞は一見にしかず。元町末広町を上を向いて歩いてほしい。下見板張りのペンキ塗りの洋風建築が見つかったら、そのまま視線を下げてみる。するとそこに、風鈴と暖簾(のれん)が似合いそうな純和風の造りが現れる。蕎麦(そば)屋の2階にケーキ屋が乗っかったと思えばいい。これは、開港で多くの西洋建築を建てた棟梁(とうりょう)たちが、明治中期以降、洋館を建てる機会が少なくなり、日本人の住宅にウデに覚えの西洋建築を半分足してしまったことに始まる。なぜかこの函館式和洋折衷が流行してしまったのだ。この和洋文化が混淆(こんこう)する町並みは、長崎の東・南山手地区と同様、「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されている。
横浜・神戸・長崎のヘリテージングで感じるのは、日本に来た外国人のバイタリティ。函館・札幌・小樽で感じるのは、北の大地で文明開化を果たした日本人の逞(たくま)しさと心意気。とにかく元気の出る北海道ヘリテージングだ。
イギリス積みのレンガ造り「函館ヒストリープラザ」
(旧金森商船倉庫群)
フランス積みのレンガ造り「BAYはこだて」
(旧日本郵船倉庫)
山下りんのイコンも見られる「函館ハリストス正教会復活聖堂」
函館一の派手な歴史建築「旧函館区公会堂」
あくまでもシックな英国調「開港記念館」
(旧イギリス領事館)
歴史的建築物活用の先がけとなった「はこだて明治館」
(旧函館郵便局)
海岸通りの好景気を偲ばせる商家「太刀川家住宅店舗」
函館でしか見られない不思議建築「函館式和洋折衷住宅群」